私の気に入った鍔の部屋 その 5

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[裏面]
 朧銀(四分一)の地面に、
突然の夕立と雷鳴におびえて逃げ惑う京の市井の人々を
金銀銅、赤銅の象眼で彫り表す。
 両櫃 脇差の鍔です。

[ 裏面 ]  山道に小川、片手をあげ 雨粒の気配を感じる大原女、
     空を見上げて、今にも天気が、崩れて来ぬか不安げな旅人

[ 表面 ] 天が荒れ狂い、暴風雨に稲妻が、走ります。
     耳を押さえて駆け出す町奴、
     小屋に入って草鞋の紐をほどく 炭売り、
     窓越しに空を仰いでいるのは先ほどの大原女でしょうか。
     荷物の影は御師、奥にいるのは誰でしょうか。

 作者の正楽は、別の鍔では、人物の仕草を変えたり、持ち物を変えたり、
登場人物の配置や、時間をずらして作品を多く作っています。

 鉄を扱うことに長けているが、本作は、上質の朧銀(四分一)の作です。
江戸後期 京都三作の一人、鉄元堂正楽、今から二百三十年ぐらい前の作。

Tsuba
Shibuichi ground.Shelter from rain .
Signed Tetsugendo Shoraku Toshiyuki with seal.
Middle Edo period(1772-81). (67*61.5mm)
 「夕立の図」 朧銀地 脇差鍔

  銘 鉄元堂 正楽 [金印銘]敏行
 「夕立の図」 鉄地 縁頭

  銘 安永九年八月 彫之
  (鉄元堂) 正楽 [金印銘]敏行
「夕立の図」鍔 銘 鉄元堂 正楽
「夕立雷神の図」縁 銘 鉄元堂 正楽
 「夕立の図」 鉄地 縁
「雷神図」 鉄地 頭

 鉄の地面に、頭は雷神の姿を金銀銅などの金属を象嵌して、
縁には突然の夕立と雷におびえて逃げ惑う京の市井の人々を
金銀銅、赤銅の象眼で彫り表す。
 本来は、脇差に使用していたと思われますが、刀の拵えに直して使用されていたようです。

[ 縁 ] (ふち) 、1つの縁 の角度を変えて見たもの。
木に小川、雨が振りだしてきた(大原女)、振り分け荷物で駆け出す男、
建物に入って雨宿り(炭売り、御師、町奴、猿回し)、
雷鳴に怯える男 と、起承転結に。

[ 頭 ] (かしら)は、「雷神図」ここではその姿をあらわして、落雷を落としています。 (上段 )

 作者の正楽は、登場人物を変えたり、この時の時間をずらした作品も多く
求めに応じて 楽しんで作っているようです。
 その名の如く鉄を扱うこと天下に並ぶものなし、
江戸後期 京都三名人の一人、鉄元堂正楽、最晩年の作。

Fuchi
Iron ground.Shelter from rain .
Signed Anei 9nen 8gatsu Korewo Horu ( Tetsugendo ) Shoraku Toshiyuki with seal.
Middle Edo period(1772-81). (38*22*14mm)

Kashira
A picture of the god of the thunder and the rain.Iron ground.(34*18*10mm)